このデジタルアーカイブは、日本が所蔵する漢籍資源を中心に収録したオンラインプラットフォームだ。運営主体は日本の関西大学東西学術研究所で、長年にわたる漢籍収集と整理の実績を背景に、2000 年代初頭にオンライン公開を開始した。その最大の特徴は、日本国内の図書館、博物館、学術機関などが所蔵する漢籍をデジタル化して統合して公開している点だ。たとえば、京都大学図書館所蔵の宋版『論語集注』や、静嘉堂文庫所蔵の唐鈔本『杜詩』など、世界的にも稀で貴重な資料が含まれている。
Kanripo の最大の強みは、日本が所蔵する漢籍の多様性と質の高さにある。江戸時代以降、日本の学者や蔵家は中国の古典籍を積極的に収集してきたため、多くの稀覯本や写本が国内に残されている。たとえば、平安時代に写された『白氏文集』の断簡は、中国国内では現存するものが少なく、日本でしかよく保存されているものが多い。
Kanripo が他のデジタルアーカイブと大きく異なる点は、全ての資料が無料で閲覧・ダウンロードできることだ。多くの学術データベースは有料会員制や機関契約を必要とするが、ここでは誰でも簡単にアクセスできる。これは特に学生や独立研究者にとって大きな恩恵だ。例えば、大学の図書館にアクセスできない地域の研究者でも、自宅から貴重な漢籍を調べることができる。
■ 中国の『中国国家図書館デジタルコレクション』との違い
このプラットフォームは中国国内の漢籍を中心に収録しているが、日本所蔵の資料は限られている。たとえば、日本で保存された宋版『玉篇』の異本は、中国のデータベースには収録されていないことが多い。また、利用には登録が必要な場合があり、一部の資料は有料で提供されている。
こちらは台湾大学が運営するプラットフォームで、漢籍のテキストデータ化が進んでいるが、主に中国語圏の資料を中心としている。日本の和刻漢籍や日本学者による注釈本などは比較的少なく、視点が異なる。また、部分的に有料コンテンツが存在する。
この国際的なアーカイブは多言語資料を含むが、漢籍の分類が粗く、日本所蔵の詳細な資料が不足している。特に、日本独自の版本や解釈に関する資料はほとんど収録されていない。また、英語での操作がメインなので、日本語や中国語に不慣れなユーザーにはやりにくい場合がある。
① サイトアクセス
ブラウザで「Kanripo 漢籍リポジトリ」と検索すれば、トップページに到達できる。公式サイトの URL は「http://www.kanripo.org/」であることを確認しておく。
トップページの中央に検索バーがある。例えば「論語」と入力して検索をかけると、関連する全ての資料が表示される。検索オプションで「タイトルのみ」「著者名」などを絞り込むこともできる。
検索結果ページの左側にはフィルターオプションがある。「時代」「資料種別」「所蔵機関」などで絞り込むことができる。たとえば、「江戸時代」「和刻本」を選択すると、その条件に合致する資料のみが表示される。
検索結果から目的の資料をクリックすると、詳細ページが開く。「ページ表示」をクリックすれば閲覧でき、「PDF ダウンロード」ボタンを押せばファイルを保存できる。ただし、古いブラウザではダウンロード機能が動作しないことがあるので、最新版の Chrome や Firefox を使用することを推奨する。
トップページの「詳細検索」をクリックすると、より精密な検索が可能になる。「出版者」「出版地」「キーワードの位置」などを指定できるので、特定の資料を探す際に役立つ。例えば、「京都」で出版された江戸時代の漢籍を探す場合、この機能を使うと効率よく見つけることができる。
京都大学の東洋史研究室の研究者は、「Kanripo は日本所蔵の漢籍を一括して閲覧できるので、研究効率が格段に上がった」と語っている。特に、実際に図書館に行かなくても複数の所蔵機関の資料を比較できる点が評価されている。
Kanripo は現在も継続的に資料を追加しており、近年ではオーラルヒストリー関連の資料や近代漢籍も収録を開始した。しかし、課題も残っている。たとえば、OCR の精度がまだ完全ではなく、難しい漢字や草書体の認識に誤りが生じることがある。また、資料の説明欄には学術的な解説が不足しているため、初学者には理解が難しい場合がある。